Talk Beat 1993.6.8 鈴木博文
早朝の公園へ よく出かける
出かけると言っても ガラガラと玄関の戸を開き
フラフラと 空を見上げながら歩いていくと
そこに公園がある という具合だ
梅雨時の紅玉色の空は 突き抜けていなくて気持ちが良い
あまりにも青々としていると 自分の体が吸い込まていくようで不安なのだ
そんな青々とした空の下した では フラフラと歩けない (エゴイストとナルシシスト)
しっかりとコンクリートの路面に足の裏をくっつけていなければならない
なんと力の要ることだろう (ハエ男の恐怖 ハエ男の恐怖)
梅雨時どき の紅玉ルビー 色の空の下した では その天空の厚みによって 僕の体は浮き上がることなく フラフラと歩くことが出来る
公園に行く時間は僕の一日の最後なのだ
前日の昼過ぎに起きて 巡り巡って日付をまたぎ 人気ひとけ がないこの公園に来て
(ぼくが電話をかけている場所) (自殺―もっと安楽に死ねる方法)
この文章もそんな時間に書いているから
知らないうちに僕は眠って、て、て、眠って
煙草タバコ を取り出して目覚めよう
そういえば随分ずいぶん 煙草タバコ を吸う人が減ってしまった
あちらこちらが禁煙箇所で 僕は煙を吐き出すことができない
娘が高校に入学して自宅の居間までも禁煙になってしまった
「吸わないで クサいから
タバコを吸わないのに 吸う人と同じぐらい 発がん性物質が体内に残るんだよ」
何を生意気なこと言ってやがる 何を生意気なこと言ってやがる
残る量が同じだったら 君も吸えばいいじゃないか
(※ 聞き取り不能)
1941 1941
明日あした は結婚式
1993.6.9
1993.6.9
そう心の中でつぶやきながらも
僕は灰皿の縁フチ で まだ一口ひとくち だけ吸っただけの煙草タバコ の火種を持つ
未練がましくその煙草タバコ を口に咥くわ えて 自分の部屋へ帰った
あー
喫煙者はこんな目に遭あ いました
喫煙率は 先進国の平均という
しかし ふと"先進国"とはどんな国のことなのかと考える
一つだけ分かることは 死因をこうやって見つめて時を過ごす程ほど の余裕がない国が "先進国" だということだ
早朝の公園へよく出かける
公園に歩くのは それは外そと が 外気がいき がこんなにも弛ゆる いものだと知らなかったのだ
目の前に人工の石の池があって
(※ 聞き取り不能)
肌で感じる
「Talk Beat 1993.6.8」は鈴木博文のソロアルバム「三文楽士」に収録されている。歌詞カードには「聞き取り不能のため掲載できません」とだけ書かれている。ので、これは私が聴いたものを書き起こしたものです。なにせ「聞き取り不能のため掲載できません」となっているため、聞き間違いは多々あると思います。(※ 聞き取り不能)とした部分は、かなりのエコーやディストーションが掛けられており本当に聞き取れませんでした。
1993.6.9
つきつめたらもたないよ 白や黒が混じる街を バラ色と言い放って 逃げるのは もうやめてみよう (2011/11/27 追記)
早朝の公園へはあまり行かない。
自宅のあるマンションを出て、いつもとは逆の方向へフラフラと足元を見ながら歩く。
そこに公園があり、目の前に人工の石の池だったものがあって、水が干上がっているのでそこに ひょいと飛び降りて、噴水だったであろう構築物を脇目に歩く。ふと足音がするので振り返ると、同じマンションから出てきたらしい女子高生も、かつて池であったであろう場所を私と同じように歩いてくる。私にとっては、その池だったものを横切るのは初めての事だったが、彼女は毎朝そうして通学しているのであろう。にしても、若者のお手本にならなきゃいけないような歳なのに、これで良「これでいいのだ」テレビの男が言う。
公園を抜けて更に歩くと、後ろの方でカチャカチャと音が聞こえる。振り返ると、制服の女子高生が自転車を押して歩いている。どうやら自転車のチェーンが外れてカチャカチャと音を立てているらしい。その女子高生はブスッとした表情で、しかしこのまま遅刻することに対して既に諦