Cycle

Cycle ya-to-i
作詞: 小林ふみえ(現 益子ふみえ) 作曲: 山本精一

優しすぎると 涙が落ちてくる
空を見上げると 雪が舞い降りてくる

大切でも 別れはやって来る
自転車に乗ると 風がみてくる

ゆっくり 鳥が弧を描く
身軽な体 守るものはただ命だけ

思い出すと 涙が落ちてくる
空を見上げると 星達がってくる

捨てずにいると 動きが鈍くなる
橋を渡ると 夏の景色が待ってる

まつげと頬が 乾くまでいだら
空が息をして しらみ始めた
今 何か聴こえた

朝焼けの色 戸棚の写真 ネコ
すりきれたテープ 声も乗っていけない

握りしめていると 手放せなくなる
渡り鳥は 眠れる海を越えて

あいしすぎると 手放せなくなる
逢おうとして 枝は春を待っている

守りすぎると 涙が落ちてくる
望んでると 絶え間なく落ちてくる

全身を巡る 朝の空気通して
空を見上げると 雪が舞い降りてくる

「Cycle」はya-to-iのファーストアルバム「The Essence Of Pop-self 1996-2001」に収録されている。ya-to-iは、山本精一岡田徹伊藤俊治によるユニットで、メンバーそれぞれの名前の最初の音をつなぎ合わせている。
「The Essence Of Pop-self 1996-2001」は結成から2001年までに作成した楽曲を収録しているアルバムであるが、アルバムコンセプトがないため、詰め合わせ感が否めない。9トラック目にて1トラックの目の「Funny Feelin'」のリミックス「Funny Feelin' (reprise)」を収録しているが、そんな小手先のやりくちを使っても全体の統一感の整合性は保ててはいない。確かに、1トラックの目の「Funny Feelin'」は傑作としか言いようがないけれども、逆に、傑出しすぎているので、そこがこのアルバムのピークだと感じてしまう。だからこそ9トラック目に「Funny Feelin' (reprise)」を置いてしまうんだろうけど。
また、岡田徹山本精一の二人ともの悪い癖なのだが、クドくなり過ぎるきらいがある。8トラック目の「Powder」の7分51秒とか、「Funny Feelin' (reprise)」の3分16秒とか、「空の名前」の5分31秒など冗長すぎる。ショパンを見習え(無理)。
かというと一方で、「シークレット・ソング」の3分16秒、「Street To Go」の3分37秒などは逆にシンプル過ぎて物足りない。「Street To Go」はそのシンプルさゆえに逆に打ち出される力強さが魅力なのだろうけど。「Street To Go」を初めて聴いたのは30歳の時だったのだが、その時でも既にこの曲は私にはまぶしすぎて持て余し気味だった。
また、「シークレット・ソング」はこの曲だけ羅針盤のような楽曲で、アルバム全体から浮いている存在となっている。
まぁ、要するに、「Funny Feelin'」が傑作過ぎるので他の曲がかすんで見えるけれども、他の曲もそんなに出来は悪くない。悪くないんだけれども…、もったいない。

前置きが長くなりましたが、「Cycle」の話にフォーカスします。
理由は不明だが歌詞カードでは8トラック目の「Powder」と7トラック目の「Cycle」の掲載順が逆となっている。
また、歌詞カードには「朝焼けの色 戸棚の写真入れと」と誤植されている。セカンドアルバム「menu」では「朝焼けの色 戸棚の写真 ネコ」と修正されているので、今回は「menu」の表記を採用した。
表題は、多分、自転車に乗って考えたこと、みたいなことだろうか。一方で、一番最後で一番の最初に戻ってきており、一巡したというサイクルの意味もあるようだ。
歌詞の内容は、テーマを掘り下げるのではなく、とりとめのない内容が羅列されている印象である。
他の楽曲と異なり、唐突に終わる。あえて終わりっぽくしないことで最初に戻る感じを出しているのかもしれない。
この曲は後にNHK-BSの「デジタル・スタジアム」のエンディングテーマに採用されている。また、ya-to-iのセカンドアルバム「menu」にspeedometer.による「Cycle」のリミックスが収録されている。
「menu」収録の「Cycle」summer smooth mixは曲が始まると、原曲を知っている身からすると「これでいけるんかいな」と心配になるが、ボーカルが入ってそれが前奏ではなく通奏されると分かると「案外いけるんやん」とホッとする。ボーカルはボーカルではなくポエトリーリーディングぽく聞こえる。そのあたりをどう思うかで評価が分かれるだろう。
「menu」収録の鈴木慶一による「空の名前」Pekin's sky mixも同様にボーカルを端に追いやるような作品なので、続けて聴くと、Re-Mixってそういう仕事なのかとも思う。ていうか、PekinじゃなくってBeijingじゃねえの? なお、Pekin's sky mixとは、ノイジーにしたのを自虐的に北京の空みたいって言っているだけで中華風というわけではない。岡田徹のお株を奪うようなムーンライダーズぽい仕上がりとなっている。1分以上ある前奏はもうちょっと短く出来なかったのだろうか。元から長かったけれども、おかげで6分18秒まで膨らんでしまっている。