僕は負けそうだ

僕は負けそうだ ムーンライダーズ
作詞: 鈴木博文 作曲: 鈴木博文 / 白井良明

狂える町の中 ふるえる白い肩
突き放した夜にさえ 僕は負けそうだ
笑える言葉たち 気取らない爪先
がれ落ちた女にさえ 僕は負けそうだ

愛しながら愛されることに慣れて
愛されながら嫌われることを知った

かけてく月のが ゆるんだ口元に
落ちてゆく夜にさえ 僕は負けそうだ
そんなに近寄るな きみにはかなわない
花のようなにおいがして 僕は負けそうだ

忘れながら思い出すことを 知って
話しながら 遠くを 見つめていたんだ 青いベンチ

誰の夜でもありゃしない きみのものでもありゃしない
約束の町に行く 電車はいつでも赤いライトを
誰のせいでもありゃしない きみのせいでもありゃしない
ただ僕は朝を待つ 赤くびついた柱にもたれて

ゆるやかな海風 泣き出した微笑み
川のような頬を見て 僕は負けそうだ

たとえば朝が来て きみの夢が終わる
こもれ日を手のひらに 僕は負けそうだ

つぶやくくちびるに 星屑が光ると
流れてゆく二人を見て 僕は負けそうだ

僕には戻れない きみまで走れない
固くなった朝の空気 僕は負けそうだ

「僕は負けそうだ」はムーンライダーズのアルバム「Bizarre Music For You」(1996年)に収録されている。「Bizarre Music For You」には鈴木博文さん作詞の曲が4曲収録されており、いつもより鈴木博文成分が多めである。
「僕は負けそうだ」は、歌詞に反してハードロックなアレンジとなっている。
かつてYouTubeに上野公会堂でのライブでツインドラムでこの曲が演奏されていた動画があがっていたのだが、そちらはアルバム収録のものよりさらに迫力があった。
以前にも書いたが、この頃は曲のスケールに合ったスケールの歌詞をつけなければならないという固定概念が有った時代であり、最初聞いた時に「んなアホな」と思った。正直、「誰の夜でもありゃしない」の部分で笑いが止まらなかった。聞き慣れると、そういうミスマッチ感は感じなくなった。以前にも書いたけれども、やっぱりのち椎名林檎がハードロックに私小説のような女々しい歌詞を載せて商業的に成功してから考え方が変わったのだろう。

僕は犬じゃなくて 誰にも気づかれず溶ける雪だ

振り返ってみると、意外にも、私にはこういう修羅場はなかった。誰一人ひとりとして、自分で白黒ハッキリさせようとしなかった。だから、デマに惑わされたり、気付かれないまま終わったりしたのだった。
今から20年近く前、名前も顔も知らない女性が「今度結婚するので退職の挨拶に回っているんですけど」と言ってきた。「誰?」と思いながら話を聞くと、その人は私と同じ部署に所属している女性だった。「もしかして、わたしの事、ご存知ありませんでした?」と言われたので「申し訳ありません」と言うしかなかった。

いつだって あなたのそばではしゃいでた

ほぼ同じ頃の別の話。

私の職場の隣の席の人妻とは別の、同じ部署にいた人妻が私のことを「あの人、人妻でも手を出すらしいわよ」と言いふらしていた。
なお、その人妻は勤務時間中に同じ場所に立ったまま平気で数時間立ち話をするので、最終的に、他に女性のいない、話し相手のいない拠点に異動になった。
また、「人妻でも手を出すらしい」私がその人妻に全く手を出さないことにいら立って、私の持ち物に八つ当たりしていたので本当に面倒だった。

ワッフルワッフル」? なにそれ? 美味おいしいの?

さよならも言わないの

私の話じゃないけれども、強烈に覚えている話。
同じ会社の男性社員が地方に転勤になった。
翌月、私と同じ部署にいた私より先輩の女性社員がその男性社員に、彼女いわく"餞別せんべつ"として、やや厚みのあるA4封筒大の荷物を郵送しようとしたところ、X線検査に引っかかって「刃物は送れません」と突き返されたという。
彼女いわく「一人暮らしは大変だろうけど、これ使って自炊して、っていう意味で」包丁を送ろうとしたとのこと。
その女性は「なんでX線検査なんかやってんのよ」とボヤいていたが「そりゃ、あなたみたいな人がいるからだ」とはツッコめなかった。
で、何故なぜか私以外の職場の人達はその女性の言い訳を鵜呑うのみにして、心温まる良いエエ話だと思っていたようだ。
いやいや、その二人は多分、もともと付き合っていて、男性が転勤を機に関係の自然消滅をはかったのだが、女性のほうは納得できなかったので包丁を送りつけようとしたんだろうって思った。
結局、その二人はそれから1年後に結婚した。