明日君が息絶えたら いったいどれだけの人が悲しむのだろう

きっとふたりは ふたりきりさ

大学時代の話って、案外書けないことが多くってびっくりしている。某大学の教授になった奴はいつも授業中寝てたとか、某高専の女教師になっている子は授業をサボって男とデートしていたとか、営業妨害な話になっちゃうし。
で、これは某大学の教授になっている人(以下、Sちゃん)の話(ぉぃ

学部3回生の時の話。
以前から学科内で嫌われていた博士課程の人が助手に採用された。いつもピリピリしていて、他人に当たり散らす嫌なヤツだった。
彼は一応社会人になったということで、学部時代にテニスサークルで知り合ったという女性と結婚した。
のだが、披露宴の時に友人席に友人がいなかったという噂が流れた。
私はこの話を同じクラスの女子から聞いたのだが、「テニスサークルで知り合ったんなら、テニスサークルの友人が来るんじゃないの?」と尋ねると彼女は「本当に誰も来なかったんだって」と言う。
友人が出席していないのに、果たしてどこからそんな噂が流れるのか。それは、披露宴に出席したK教授の口から漏れているのだろう。あの人はいつも一言多かった。
うちの学科の教授会は原則、内容は極秘で議事録も残さない事になっているのだが、いつも中身が筒抜けだった。

工業化学という、化学プラントを設計するための技術を学ぶ授業があって、わざわざよその学部の教授が別のキャンパスからやって来て授業を行っていた。
うちの学科は数十年の歴史があったにもかかわらず、OBで化学プラントの設計をしているのは十数人しかいない事に気づいた私は「どうせそんな職に就く可能性はないんだから、いい成績取る意味ないし、単位取れれば良いわ」と最低限の勉強しかしなかった。
蓋を開けてみると、私のクラスのほとんどが工業化学の勉強を最低限しかしておらず、隣のクラスの成績と比べて非常に差がついた。工業化学の教授は、彼の所属する学部の学部長に「今年のxxxxx学科の成績が非常に悪い。おたくのお子さんも含めて」と報告したらしい。
で、恥をかかされた某学部長は自分の息子に「なぜちゃんと勉強しないんだ」と問い詰めたところ「たぬき君が工業化学を勉強する意味はないってクラスのみんなに言ったから」と、まるで私がみんなを煽動したかのような表現で、私に責任転嫁しやがった。
で、夏休み前に、来年の入試問題の作成担当などを決める、大学内の化学担当のすべての教授が集まる教授会で、某学部長が議題と関係ないこの話を怒りあらわに訴えたそうな。すると隣の学科の無機化学の教授が「無機化学なんかやってもノーベル賞は取れませんよ」とか言っていたあいつかー!と呼応して、会議は紛糾。ていうか、わたし敵作り過ぎワロタ。
結局、うちの学科の教授らが「大事な息子さんをお預かりしているのに申し訳ない」と某学部長に平身低頭で謝ってその場を収めたそうな。
でも、教授会の内容は原則極秘のため、私が呼び出されて注意を受けるということにはならなかった。

で、クラスの女子が「そもそも何であんな人が結婚出来たのかわからんわ」と言ったので、私は「優しい人っていうのはみんなに優しいから、女性からすると物足りなんじゃないかと思う。自分にだけ優しいほうが、自分は特別だって思うんじゃないの?」と答えた。

数年後、修士過程に進学してから別の研究室に所属したのだが、この話を女性の講師の人にしていると、「私、そのSちゃんの披露宴出たわよ。友人代表として」と言い出した。
Sちゃんの父は大学教授で、Sちゃんの母もSちゃんの父と同じ大学出身で、講師の人はSちゃんの母と大学の同級生で、講師の人はSちゃんを赤ちゃんの頃から知っているから、"友人代表"として出席したのだと言う。
ちなみに、うちの研究室の教授と講師の人も大学の同級生なので、なんて濃い人間関係なのだろうと思う。
講師の人は「私が友人代表として出席したのだから、友人が出席しなかったっていうのは間違いだ!」と言い出した。「いやいや、Sちゃんの母親の友人であって、Sちゃんの友人じゃないでしょ」と突っ込んだが、講師の人は本当に怒り出して「私はSちゃんの友人なの!」と大きい声を出した。Sちゃんに友人がいないのはもはや明白であったが、Sちゃんが馬鹿にされているのは感情的に許せないようだった。そういう意味では、彼女はSちゃんの家族以外での唯一の味方で、つまるところ友人だったのかもしれない。
これ以上怒らせると今後オヤツをもらえなくなると思った私は、講師の人の主張に適当に同意してその場を取り繕ったのだった。