悪魔が笑う お前が誰かを呪う度

嘘と狂気の化学式

学部1回生の時の話。分析実験の授業で、各生徒に中身がバラバラの試料が配られ、その内容を分析して当てろという実験内容だった。
当時はなんとも思わなかったが、大学院に上がったあとで学生実験の補助のバイトをした時に、その準備や後片付けの作業量の多さに驚いた。まる1日潰れる仕事だった。
で、試料の中身を当てるという実験なのだが、いくらやっても自分の試料からは何も検出できず、見かねた技官が「そんなはずはない」と言って私の試料を同時に分析し始めたが、結局、技官の人も何も検出できなかった。技官の人は「こちらの不手際だ」と言って「君、今週のレポートは提出しなくていい」ということになった。
翌週、その技官の人から「あのあと、分析実験のスタッフ全員総出で君の試料を分析した結果、こちらが用意した成分が極微量だけ検出された」と言ってきた。技官の人はそれ以上のことは何も示唆しなかったが、私が実験室に来る前に、誰かが私の試料の中身を捨てて、水を入れて戻したのだろう。ちなみに、私はその実験の日は非常に早く実験室に着いていたため、その時既に実験室にいたのは隣のクラスのO君とX君だけだった。

夜と悪夢の帰納法

学部4回生の時、隣のクラスのn君(これまで数回出てきた同じクラスのN君とは別人)が、何度も実験に失敗する事態に見舞われていた。
誰かに実験を妨害されていると確信したn君は、同じ研究室に配属されているうちのクラスのY君(こちらはこれまで数回出てきたY君)にだけ相談し、交代制でお互いの実験装置を見張ることにした。すると、n君が一度失敗した実験も、失敗した時とまったく同じ手順で行って成功したため、やっぱり誰かに実験を妨害されていると確信するに至った。
卒論には余裕のあったn君は更にいろいろ検証した結果、実験途中で硫酸を混入されると、以前失敗した時と同じ状態になることを突き止め、確実に誰かに実験を妨害されたと実証出来る状況にまで至っていた。
n君は、実験妨害にあった時の同じ研究室の人々の研究室の出入りのタイムテーブルを作成して検証した結果、X君が怪しいと睨んでいた。

私は週末の朝 ひとり手紙を書いた

私が学部を卒業して大学院に進んだ時の春休みにY君と遊びに行った時に、n君の話と、隣のクラスの教官の人事異動の情報と、それに伴ってX君が別の研究室に移るという話を聞いた。Y君は「これでビクビクせずに実験ができる」と嬉しそうだったが、X君が移っていった先の研究室の人たちは可愛そうだなとは思わんのか、とも思った。

私は帰宅してから、X君の異動先の研究室に配属されている、隣のクラスの女子(以下、Tさん)に、Y君から聞いた、X君がn君の実験を妨害していたという話をワープロで手紙に書いて匿名で送った。
たぶん、Tさんは親友だと思っていたMさんに相談したのだろう。MさんとY君は高校時代からの同級生なのだが、MさんはY君に「X君がヤバイんだって」と冗談めかして尋ねてきたそうな。なお、私が送った手紙にはY君の事は一切触れていない。つまり、Tさん&Mさんは、匿名の手紙を送ったのはY君だと思っていたらしい。いや、Mさんはもしかしたら、私が怪しいと気付いていたものの、Y君の仕業に仕立てたかったのかもしれない。
Y君はMさんの追求に「何の話」と、しらを切り通したそうだ。
その夜にY君から電話があり「Mさんとか隣のクラスの女子にあの話が広まってるんだけど、n君と自分とお前しか知らんはずなのに」と言われたが、「お前か、n君が、誰かに言ったのを忘れてるんじゃないの?」とトボけた。
Yがこのブログにたどり着くとは思わんが、本当にすまんかった。